ゼロぐらいから始める精神科薬〜黒質線条体の話〜

これまでに3つのドパミン経路について解説を行った。今回はタイトルの通り黒質線条体のドパミン経路について解説を行う。以前、副作用について記事にしたが抗精神薬のEPSについての理解を深めるうえで非常に重要となる。

黒質線条体経路

黒質線条体経路では主にEPSについての理解深めるための記事にしようと思うのだが、神経節前線維と節後線維について、すなわち「ドパミン神経→コリン作動性神経→運動神経」何処で何が起こっているか理解することが重要である。

「アセチルコリンードパミンバランス仮説」が有名ではある。
アセチルコリン(Ach)とドパミン(DA)は拮抗しているというものだ。
コリン作動性神経からのAch放出はDAにより抑制される。
だからこそ、抗精神薬によるD2遮断は運動神経のAcHを過剰分泌させる(EPS)

EPSを解説するならこんな感じであろう。

  1. ドパミン神経からのDA放出
  2. コリン作動神経D2R遮断によりAch過剰放出
  3. 運動神経過剰興奮(EPS)

そこで抗コリン薬(ビペリデン等)は3.に作用しパーキンソニズム対処に使う。

面白いことに1.においても前回、前々回も解説した通り5HT2Rとの逆相関が成り立つ。
GABA神経を通じてDA神経からのDA放出を調節している。

すなわちEPSの対策は抗コリン薬だけではない。非定型等の5HT2Rにも遮断作用を有す受容体特性を持つ抗精神薬を選択することも重要である。
余談ではあるがリフレックス(ミルタザピン)がEPSに使われる事がある。新鮮に対してB遮断薬との比較が過去にされたことがあるらしい。
精神分裂病にリフレックス?と気になったあなた、素晴らしい。
うつに使われるケースもあるのが非定型抗精神薬の素晴らしいところだが詳しい話はやめておく。

アップレギュレーションについて

こんな言葉聞くのは大学いらいではないだろうか?
D2受容体のアップレギュレーションは精神科薬の理解を深めるうえで念頭においておく必要がある。

わかりやすく神経遮断薬(第一世代、SGA、定型)を例にするが、黒質線状態において強くD2遮断されると続けると受容体の数が増える(アップレギュレーション)。これは遅発性ジスキネジアの原因と考えられていいる。ドパミン過感受性精神病と知っているだろうか?DSPと言われるものだ。簡単にいればこれのこと。どの薬も副作用で使えなくなる。そんな感じ。

参考文献とおすすめの著書

安価で専門的で実用的な著書はこれ以外に出会ったことがない。薬剤師のみならず看護師、コメディカルにも購入していただきたい著書である。特にマイナー(BZD)の勉強にちょうどよい。

昨年ついに5版が発売されましたね。私は初めてこの著書に出会った時はそのセンスの良さに衝撃を覚えました。精神神経薬理学において間違いなく本書は最高峰であると思う。個人的には精神科を生業としている薬剤師には読んでいてほしい一冊である。1万円以上しやや高価であり躊躇している方は4版を中古で購入すると3000円程度なのでそれを買えば問題なし。特にメジャートランキライザーの受容体特性に関する考え方が1つ上のステージにあなたを導くであろう。

高価!何を言っているか分からない!
しかし、避けてはだめだ。DSM‐Ⅴ。ICD-11。そのちょっとした理解が薬の知識向上につながる。

通勤中の一冊にどうぞ

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