ゼロぐらいから始める精神科薬〜中脳皮質系の話〜

前回、中脳辺縁系について記事にした。DA、5’HT-A、Achが重要と言いながらDAのみ解説した。今回は他の神経系について解説していくのだがDA以外も説明したいと思う。

中脳皮質系とは

中脳辺縁系と同じく中脳の側腹被蓋より投射される経路であるが前頭前皮質へ投射される。
そのため統合失調症における認知機能(背外側前頭前皮質)や感情(腹内側前前頭皮質)の調節を担っているとも考えられている。それは陰性症状との関わりを意味している。
ここでストールの言葉を借りるが中脳辺縁系においてHOT(DA過剰)状態が陽性症状を例えられるが中脳皮質系においては陰性症状はCOLD(DA不足)状態である

神経遮断薬(抗精神病薬)の副作用で陰性症状はD2受容体を遮断することによりCOLDになっているからである。

中脳皮質系におけるドパミン神経の調節

中脳辺縁系のDA放出はGABA神経のGABAにより抑制される

GABA放出はグルタミン神経からのグルタミン酸によってGABA神経が活性化により促進される

グルタミン酸放出はセロトニン神経から放出されたセロトニンがグルタミン神経の5HTA2受容体により促進される。5HTA1受容体遮断作用によっても促進される

言葉で説明すると無理があった。

要約すると中脳辺縁系は間接的にセロトニン神経からの影響を受けていることを伝えたい。

5HTA2RアゴシストはDA放出を抑制(COLD)

5HTA2RアンタゴニストはDA放出を促進

5HTA1RアゴシストはDA放出を促進

余談ではあるが精神神経領域のセロトニン受容体について私は大学時代
5HTA1刺激はうつの改善
5HTA2R刺激は抑うつ、陰性症状の副作用
5HTA3R刺激は吐き気
遮断はその逆
このように覚えて試験に挑んだものだ。
社会人となった今でも以外に役に立つ。
ちなみにG蛋白は「臭い匂い」とおぼえた。
くGq に5HT2
さGs よ5HT4
いGi い5HT1

SDA(リスペリドン)について考察

ここで抗精神薬の歴史的な話をするのだが、定型抗精神薬(クルプロマジン、ハロペリドール等)はD2受容体遮断作用に特化した(トゲトゲしている印象)受容体特性を持つ。
すなわち陽性症状はマシになるが陰性症状が出現するという神経遮断薬のジレンマである。
そんな中、5HTARアンタゴジスト作用を持つ非定型抗精神病薬ゾテピンが登場し陽性症状にも陰性症状にも効果が見られた。
今でこそ人格水準低下と鎮静作用の強さで使われるケースが少ないが偉大な第一歩であった薬と私は思う。
さて、リスペリドンに代表されるSDA(5HTA、DA、アンタゴニスト)であるが陰性症状にも効果がある。これは5HTA2受容体のアンタゴニストとして作用することで中脳辺縁系におけるDA放出を調節により陰性症状症状を予防していると考察できる。鎮静とかプロラクチンとかはここで詳しくは記載しない。

参考文献とおすすめの著書

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高価!何を言っているか分からない!
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