求められる薬剤師の専門性〜単なる「減薬」を超えて〜
ポリファーマシー対策が加速する中、薬局薬剤師に求められる役割は、日増しに重要性を増しています。その中心にあるのが「服用薬剤調整支援料」ですが、この点数には「1」と「2」の2種類があり、それぞれの算定要件と趣旨を正確に理解することが、効果的な介入と適切な評価に繋がります。今回は、この2つの違いに焦点を当て、戦略的な活用法を解説します。
服用薬剤調整支援料1〜「減薬の実績」を評価する点数〜
服用薬剤調整支援料1は、「内服薬の減薬」という明確なポリーファーマシー解消成果を評価する点数(アウトカム評価)です。算定の鍵は、薬剤師が提案した結果、実際に処方内容が調整され、2種類以上の内服薬が減少し、その状態が1ヶ月以上継続することです。
主な算定要件(ポイント)
- 対象患者:
継続して内服薬を6種類以上服用している患者(服用開始から4週間以上経過しているものに限る)。 - 薬剤師の介入
患者さんの服薬アドヒアランス、副作用の可能性などを検討し、医師に対して減薬の必要性を具体的に提案すること。その検討内容や患者さんの意向、提案に至る薬学的根拠を薬剤服用歴等に詳細に記載する必要あり。 - 結果としての減薬:
処方医への提案の結果、当該薬局で調剤している内服薬が2種類以上減少し、その状態が1ヶ月以上継続していることが必須です。少なくとも1種類は薬剤師の提案による減薬である必要があります。 - 情報連携:
処方医から提供された調整結果に係る情報を薬剤服用歴等に記録・保持します。 - レセプト記載
摘要欄に、医療機関名と調整前後の薬剤種類数を明記します。
服用薬剤調整支援料1は、まさに「患者さんの薬物治療の最適化」という薬剤師の介入成果をダイレクトに評価するものです。多剤服用による有害事象の予防、服薬アドヒアランスの向上、医療費の適正化に直接貢献する、薬剤師の専門性の象徴と言えるでしょう。
服用薬剤調整支援料2〜「提案行為」を評価する点数〜
一方、服用薬剤調整支援料2は、「重複投薬等の解消に向けた提案行為」そのものを評価する点数(プロセス評価)です。減薬が実現しなくても算定可能である点が、服用薬剤調整支援料1との最大の違いです。
主な算定要件(ポイント):
- 対象患者
複数の保険医療機関から合計6種類以上の内服薬が処方されている患者(うち少なくとも1種類は当該薬局で調剤しているものに限る)。 - 患者または家族の求め:
患者さんまたはその家族等からの求めに応じて介入します。 - 薬剤師の介入:
- 患者さんの服用薬を一元的に把握します(お薬手帳、聞き取り、他薬局・医療機関への確認等)。
- 重複投薬の状況や副作用の可能性などを踏まえ、処方医に対し、重複投薬等の解消に係る提案を「文書を用いて」行います。
- 提案後も、次回来局時に処方内容の見直し状況を確認します。
- 実績要件(イとロの違い)
- イ(110点)過去1年服用薬剤調整支援料1に相当する取り組み(実際に2種類以上減薬に至った実績)を有している薬局が算定可能です。
- ロ(90点): 上記の実績がない薬局が算定します。
- 算定頻度:
3か月に1回に限り算定可能です。 - 留意点
服用薬剤調整支援料2を算定した後に、その提案によって服用薬剤調整支援料1の要件を満たしたとしても、服用薬剤調整支援料1は算定できません。
服用薬剤調整支援料2は、処方医へのアプローチという、介入の「プロセス」を評価する点数です。特に、複数の医療機関からの処方による重複投薬に焦点を当て、薬剤師が患者さんの薬物全体を把握し、積極的に情報連携を図ることの重要性を示しています。
まとめ〜戦略的な使い分けと今後の展望〜
| 項目 | 服用薬剤調整支援料1 | 服用薬剤調整支援料2 |
|---|---|---|
| 評価対象 | 減薬という「結果」 | 減薬に向けた「提案行為」 |
| 算定要件の核心 | 2種類以上の内服薬が減少し、1ヶ月以上継続 | 重複投薬等の解消に係る文書での提案 |
| 対象患者 | 継続して6種類以上の内服薬服用患者 | 複数の医療機関から合計6種類以上の内服薬服用患者 |
| 点数 | 125点 | イ:110点(実績あり)、ロ:90点(実績なし) |
| 算定頻度 | (原則として制限なし、ただし1年以内に再度算定する場合の要件あり) | 3か月に1回 |
| 「結果」の有無 | 減薬が必須 | 減薬の実現は必須ではない |
服用薬剤調整支援料1と2は、それぞれ異なる目的と算定要件を持っています。薬剤師としては、患者さんの状況に応じてこれらを戦略的に使い分けることが重要です。
- 確実に減薬が見込める場合や、ポリファーマシーの改善が喫緊の課題である場合は、服用薬剤調整支援料1の算定を目指し、徹底した薬学的評価と医師への提案、そして患者さんへのフォローアップを行いましょう。
- 重複投薬の解消が主目的であり、減薬の確約が難しい場合や、継続的な情報提供・連携を重視する場合は、服用薬剤調整支援料2を積極的に活用し、医師への提案を繰り返すことで、将来的な減薬に繋げる可能性を広げましょう。
これらの点数を適切に活用することで、私たちは患者さんのQOL向上に貢献するだけでなく、地域医療における薬剤師のプレゼンスをさらに高めることができます。患者さんの「かかりつけ薬剤師」として、多剤服用適正化のキーパーソンとなるべく、日々研鑽を積んでいきましょう。
参考文献
上司からよく理解していない加算について、あの加算を取れ、この加算を取れと言われ困っているあなたに最適な本である。持っていない薬剤師多いが間違いなくかなり助けられる。



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