突然ですがドパミン(DA)の別名をご存知だろうか?
プロラクチン(PRL)放出抑制ホルモンである。今回は抗精神病薬の副作用として軽視されがちな高PRL血症について解説していこうと思う。
漏斗下垂体系について
視床下部から脳下垂体前葉に投射されている経路であり、PRLの分泌へ関与している。
他のドパミン経路と比較して脳の外側に位置している経路であることを覚えておくと良い。
つまり、水っぽい薬剤の影響を受けやすいということだ。抗精神薬は当然ながら血液脳関門(BBB)を通過する必要がある。つまり油っぽい物質でなくてはならない。その中でもリスペリドン、スルピリドが水っぽく漏斗下垂体系へ影響しやすい。高PRL血症になりやすい。
面白いことに前回の中脳皮質系でも記事にした通り5TH2受容体がPRL放出に関与している。
つまりは
D2RアンタゴニストはPRL放出を促進
5HT2RアンタゴニストはPRL放出を抑制
DAはPRL放出を抑制(別名:PRL放出抑制ホルモン(PIH)
こういうこと。
しかし、間接的に拮抗しているわけではない。プロラクチン放出細胞にD2R、5HT2Rが発現しているのである。
受容体占拠率について
第一世代抗精神病薬(定型、FGA)と比べ、第2世代抗精神病薬(非定型、SGA)はセロトニン受容体拮抗作用を有している点がいかに素晴らしいか受容体占拠率を用いて説明してみようか。
基本的には抗精神病作用の受容体占拠率は70%前後を目指す。
それ以上はEPS、高PRL血症の発現へつながる。それが、いわゆるCP換算600mg前後と言うことだ。5HT2R拮抗作用は抗精神作用の閾値を下げることが可能と考えられている。
用量調節が楽で気分安定化等色々と使いやすいってことである。
高PRLの何が原因なのか
高PRLは性の問題とだけ思っていないだろうか?
循環器毒性が考えられている。また、自覚症状がない事が多く定期採血が必須である。
男性の女性化乳房、乳汁分泌は教科書だけの話ではない。よく目にする。
薬剤としてアリピプラゾールを少量追加することや。乳汁分泌しているケースではカベルゴリンを適量追加する事がある。
参考文献とおすすめの著書
安価で専門的で実用的な著書はこれ以外に出会ったことがない。薬剤師のみならず看護師、コメディカルにも購入していただきたい著書である。特にマイナー(BZD)の勉強にちょうどよい。
昨年ついに5版が発売されましたね。私は初めてこの著書に出会った時はそのセンスの良さに衝撃を覚えました。精神神経薬理学において間違いなく本書は最高峰であると思う。個人的には精神科を生業としている薬剤師には読んでいてほしい一冊である。1万円以上しやや高価であり躊躇している方は4版を中古で購入すると3000円程度なのでそれを買えば問題なし。特にメジャートランキライザーの受容体特性に関する考え方が1つ上のステージにあなたを導くであろう。
高価!何を言っているか分からない!
しかし、避けてはだめだ。DSM‐Ⅴ。ICD-11。そのちょっとした理解が薬の知識向上につながる。
通勤中の一冊にどうぞ