精神科薬はハイリスク薬である。
すなわち的確にフォローをすることで医療機関では事業のキャッシュフローにつながる。
ここにピンと来ない医療従事者は多い。そもそも医療従事者は社会性のない人があまりにも多い印象であるが事業でのお金の流れを把握することは雇われとして重要である。今回は副作用について踏み込んで記事にしていこうと思う。ついでにDIEPSSを用いた調剤報酬戦略を記事にしたい。
マイナーの副作用は御存知の通り。ふらつき、依存等の想像通りであるので今回は割愛したいと思う。したがってムード、メジャーについて記事にする。
ムードの副作用
ここでのムードは気分安定薬である。抗てんかん薬、炭酸リチウムのことであるが今回は代表的な物を列挙していこう。
- テグレトール、ラミクタール
薬好きな皆様はチトクロームP450の併用薬にすぐ目が行くだろうがそんなことはメーカーが出している導入方法を一読すればすぐに働けるであろう。個人的に特に注意していただきたいのが「薬疹」である。この2種類は特に薬疹が起こる。またテグレトールに関しては「水中毒」も多発するのでまさにハイリスク薬である。
ちなみに精神科は血中濃度が安定するのに時間がかかる。経験上ではあるがアナフィラキシーのように内服してすぐ薬疹がでるケースは少なく、血中濃度が安定してきたぐらい(個体差あるが2ー6週間ほど)に薬疹が出るケースが多い印象である。
そんなテグレトールであるが、Na系の抗てんかん薬としてビムパット(ラコサミド)が適応外で代用されるケースもある。前にも記事にしたがこの適応外というのが精神科の魅力でもある。ムードは心なのか、頭なのか、、、。
薬疹で点滴使う場合おそらくポララミン+ガスター+ステロイドが使われるケースが多いと思うがアスピリン喘息の既往はチェック必須である。ステロイド注射の大体がコハク酸エステルで使えない。リン酸エステルはかなりガチなステロイドしかない。でもビビるなコルチゾン換算で乗り切るしかない。 - デパケン
カルニチンが必要な患者さんて意外に多い。代謝に必要だからね。また抗てんかん薬の目的はノイズの安定化である。すなわち過鎮静のリスクはつきものだ。一般科の方には分からないと思うが過鎮静は超怖い。過鎮静は死ぬからだ。認知症の患者に対してデパケンが使われるケースが多く見られる。理にかなっている処方であるが賛否両論ある。これは短期で見るか、長期で見るかでメリット・デメリットあるからだ。 - 炭酸リチウム
機序不明。通ぶると「モノにもバイポーラにも使う」要約すると単極性の鬱、双極性感情障害に用いられる。参考書にはよく「単剤では抗鬱作用がある」と記載があるが実際は補助役等による多剤で使用することもある。この薬は患者が死ぬからね。気を付けて。
腎機能低下やオーバードーズによるLi濃度上昇によるリチウム中毒は本当に死ぬ。場合によっては透析で取り除く必要がある。Li中毒の症状は消化器症状、意識障害、循環器障害である。死亡するケースでは不整脈の誘発が問題である。
だから希死念慮やOD歴のある患者に対し処方された場合は必ず引っ掛けなければならない。ゆめ忘れてならない。
ちなみに高校化学レベルでもわかるが割錠も粉砕できない。超アルカリ性なので、、、、。割錠している物をたまに見るがめっちゃ不味いらしい。胃に穴あきそうだが、、、、。
ムードはこんなもんか、思い出したらまた記載します。
メジャーの副作用
メジャーはそれぞれいろんな特徴があるが特に気をつけてほしいのが不整脈と錐体外路障害である
- 不整脈
いわゆるQT延長と言われるものである。おそらくどんな教科書でも乗っている。それこそ大学時代に習うはずだ。しかしQT延長は何が悪いのかわかっていない薬剤師が多いこと多いこと、、、。
QT延長は致死性の不整脈トルサード・ド・ポアントを惹起する恐れがあるから心電図をフォローする必要がある。ちなみにQTは心拍数によって変化することから補正値のQTcを利用すると良い。だいたいは12誘導心電図の左上に書いてある。ちなみに基準値は概ね400m秒(0.4秒)である。
RーR間隔の真ん中ぐらいにT波←QT延びてない?
QTc:600m秒
疑義照会
こんな感じで使う
余談ではあるが経験上、長年第一世代のメジャーをどっぷり使ってきた人たちは少し心電図が汚いイメージがある。年齢的なものなのか、薬が影響しているのか?具体的な機序は判明していないが心血管系や不整脈に関与する薬理作用としてα1と抗コリンではないか?と言われている。(抗コリンは不整脈の因果関係判明してたっけか?)
TCA(三環系抗うつ薬)やポララミンが不整脈の管理が必要なのも納得だ。 - 錐体外路障害
簡単に言うとパーキンソニズムである。黒質線条体系の関与が疑われる。ハロペリドールは強くこの経路を遮断することから悪性症候群を誘発しやすいと考えられている。ちなみに悪性症候群とは精神科から見た病名であり一般科から見た場合は悪性高熱症と表現される。
そこで薬剤師、医療従事者諸君に朗報である。
薬剤性パーキンソニズムの評価は薬剤師でもできるのである「DIEPSS(薬剤性錐体外路症状評価尺度)」というものだ。しかし、これは講習を受講しなくてはならない。受講しないとDIEPSSは使えないのである。医師免許がないのに診断ができないのと同じである。私も受講しライセンスを持っているが抗精神科薬を扱う上で必須とまで考えている。
調剤薬局における副作用管理の運用
上にあげた副作用は稀ではない。特に薬剤性パーキンソニズムにおいては普通のことである。副作用の評価、患者の状態を的確に把握できれば医療機関と連携が取れる。
すなわち服薬情報等提供料の算定が可能である。
また、精神科薬の副作用は経時的にフォローする必要があり特定薬剤管理指導料1ロ)は算定できる。
本年6月よりハイリスク加算がベタ取りできなくなり処方箋単価が軒並み減ったと言われる。それは薬剤師の勉強不足であり力不足であると私は考える。もちろん取り扱う処方箋、患者層によるので一概には言えないが、、、。
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