精神科薬として一番に想像するのがベンゾジアゼピン(BZD)ではないだろうか?「マイナー(マイナートランキライザーの意味)」と表現すると通ぶれる。
マイナーについて調べると医療法人の記事をよく目にすることができる。非常に勉強になる。
しかし一般人(患者)に向けて浅く発信していることが多い(変な不安をさせないためであろう)。そのような記事のみで勉強している薬剤師も多い。一般的な薬の書籍と同じレベルの内容でもあるため十分であると言える。しかし、精神科薬を学んでいきたいと思うのであれば不十分である。
本記事は精神科薬を少し深く学ぶための最初の一歩にしてほしい。詳しい内容は著書と日々の経験で培っていくべきであると考える。
ネットで見られる一般的な解釈
作用が短い
効果発現が早く、依存しやすい
1日3−4回もしくは頓服での使用
作用が長い
効果発現はマイルド、依存しずらい
これしか記事にしていないだろう。
ゼロぐらいから始める勉強方法
マイナーのtmax、t1/2をある程度把握することは重要である。それこそネットサーフィンで勉強すればOKである。それに加え薬剤それぞれの作用バランスの特性について理解を深めて欲しい。
作用というのは大きく「就眠」「抗不安」「抗てんかん」「筋弛緩」などである。
ランドセンを例にあげてみると
ランドセン(リボトリール)は抗てんかん薬と広く認識されている。
しかし精神科、神経内科でよく見られるが、てんかん治療ではない症例を見たことがあるだろう。
ランドセンは抗てんかん作用に加え、筋弛緩作用、抗不安(内的不穏)に対して強く作用し依存しずらいという特徴がある。
内的不穏に関してはジアゼパム換算でもトップクラスの高力価薬である。筋弛緩作用も兼ね備え薬剤性ジストニア(筋緊張)の症状緩和に使用される。
統合失調症に使用されるメジャートランキライザーの使用はてんかんを惹起する。ジストニアに代表されるEPSに抗パ剤(主に抗コリン剤)だけでなくランドセンが使用されることが説明できる。
就眠目的でのマイナーに対する個人的見解
余談ではあるがマイナーを入眠目的で利用している事自体ナンセンスであると思う。
意外と知られていないがマイナーは睡眠の質を低下させる傾向がある。
良質な睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠のバランスとその深度が重要となる。アルコールを飲んだら眠れるが睡眠の質は低下するだろう?マイナーも似たようなものでバランスを乱す傾向にある。
最近登場したオレキシン(ベルソムラ、デエビゴ)はマイナー信者からは寝れないと言われるが睡眠の質を改善する特徴を持つ。就眠導入作用を高めたいのであればα1、H1系の鎮静作用のある薬剤(クエチアピン、トラゾドン等)の併用が理にかなっていると思う。
デパスは悪か?
難しい質問だ。
立ち上がりも早く内的不穏、就眠作用をもつ。が、かなり依存しやすい。それもホメオスタシスレベルまで干渉する悪質なレベルである。正しく使えているうちは問題なく安全性の高い薬剤であると思う。しかし、正直なところデパスでないとだめな患者はそこまで多くないと思う。
内服しないと眠れない。数だけが増えていく。そう感じたらは間違いなくデパスではない。なるべく早く中止を検討すべきだ。デパスである必要はないだろ。
経験談を話そう
動機、めまい、パニックでデパスを1錠でなく2−3錠まさにポリポリ内服、数時間ごとに繰り返す。足りなくなるから3−4箇所クリニックをはしごしている。デパスがないと耐え難い苦痛が襲ってくる。まさにホメオスタシスに干渉するレベルのデパス依存精神科で入院するとなると入院期間は急性期ではざっくり3ヶ月。
デパスを抜くのに3ヶ月では足りない。主剤に置換しきれず無理くり退院させられ近くのクリニックでまたデパスをはしごし入退院を繰り返す。よくある話である。
著書紹介
安価で専門的で実用的な著書はこれ以外に出会ったことがない。薬剤師のみならず看護師、コメディカルにも購入していただきたい著書である。特にマイナー(BZD)の勉強にちょうどよい。
昨年ついに5版が発売されましたね。私は初めてこの著書に出会った時はそのセンスの良さに衝撃を覚えました。精神神経薬理学において間違いなく本書は最高峰であると思う。個人的には精神科を生業としている薬剤師には読んでいてほしい一冊である。1万円以上しやや高価であり躊躇している方は4版を中古で購入すると3000円程度なのでそれを買えば問題なし。特にメジャートランキライザーの受容体特性に関する考え方が1つ上のステージにあなたを導くであろう。
高価!何を言っているか分からない!
しかし、避けてはだめだ。DSM‐Ⅴ。ICD-11。そのちょっとした理解が薬の知識向上につながる。
通勤中の一冊にどうぞ
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