「なぜBPSDにレキサルティが使えるのか?」精神科病院薬剤師がざっくり解説

今更であるがついにレキサルティがBPSDに適応をとった。これって抗精神病薬にとって偉大な一歩だと私は思う。

ところでレキサルティの略語は発売当初はティラノサウルスからとって略語がREXだったはずだが昨今はBRXになっている。個人的にはREXが好きだ。

今回はBPSDに適応を取ったレキサルティについて記事にしようと思う。

レキサルティ(ブレックスピプラゾール)とは

メジャートランキライザーに分類される。

すなわち統合失調症治療薬である。

その受容体特性からF2圏のみならず気分障害圏(F3)にも適応があり、ついにはアルツハイマー型認知症に伴うBPSD(F0)に適応を取った薬剤である。

余談であるが添付文書上の「うつ病・うつ状態」という記載にセンスを感じる。

この辺りの話はこちらから

受容体特性を受容体の比較図を使って解説をしようと試みたが

レキサルティの受容体特性の図を探しても出てこない。

なので代表的なメジャートランキライザーの比較表があったのでこれを用いて解説しようと思う。

知的財産の関係でここに受容体特性の図を掲載していいかわからないのでURLから確認してほしい。大塚製薬が作成している資料なので間違いはない。

https://www.nextchallengeprogram.jp/mets/antipsychotics/antipsychotics03.html

受容体特性の考え方については横並び(薬ごとのK値)を比較するのではなく縦並び(同薬のK値をD2を基準として何が強く遮断されるか)でどんな特性か判断すると良い。

以前記事にした「ゼロぐらいからはじめる精神科薬」も参考にしてほしい。

レキサルティはアリピプラゾールよりもD2アンタゴニスト作用が強いというより完全アンタゴニストに近い。またD2部分アゴニスト作用よりも親和性のある5HT2Aアンタゴニスト、5HT1A部分アゴニスト作用を持つ。

こんなところだ。

この受容体特性からどんな薬かをシンプルに表現するとF2圏の症状(幻覚、妄想とか)にバッチリ効く。メジャートランキライザー特有の副作用を抑えながら、抑うつ等ムードにも効く。

もう最強じゃんってことだ。

BPSDを例に挙げると易怒性。抑うつ。幻覚。妄想。全てにおいて可能性を秘めているということだ。

ちなみに認知症による精神症状はF0(症状性を含む器質性精神障害)に分類される。

何が言いたいのか?

そもそも奇行、易怒性とかはシナプティックノイズによるものである。

F0においてはその行動障害、感情障害は脳の器質変化に伴う脳波異常によるものと言える。

すなわちノイズの治療は抗てんかん薬、メマンチンでのアプローチがセオリーである。

そのシナプティックノイズをココロ由来のものと考え治療を行うのがメジャートランキライザーでのアプローチである。この辺はグルタミン酸仮説を参考にしてほしい。

さてBPSDに対してメジャートランキライザーは精神科では昔からよく使われていた。しかしメジャーの使用は寿命を短くすると一昔前はよく言われていた。

ハロペリドールやレボトミンはα1による心血管イベントのリスクがあることは受容体特性からみてわかる。

だからこそ、これまでは適応外で精神科界隈のみにしか使用されていなかった。


精神科に受診する頃には大体が一粒の望みなのか?漫然投与なのか?無意味というか逆効果のコリンエステラーゼ阻害薬を内服していることが多い。すなわち言葉は悪いが行くとこまで行って受診することが多い。

精神科病院で務めていた私の経験からすると認知症で問題行動を起こして入院された患者は家族が縁を切りたがっていることも多い。

すごく悲しいことだ。そんな家族を1一人でも救うためにメジャートランキライザーによるBPSDへのアプローチは早期に適切に行うことが重要である。

それがついにBPSDに対し適応をとり公に使用できるようになった。
レキサルティは偉大な薬と考える。

これが精神科の大きな一歩であると私は確信している。

書紹介

安価で専門的で実用的な著書はこれ以外に出会ったことがない。薬剤師のみならず看護師、コメディカルにも購入していただきたい著書である。特にマイナー(BZD)の勉強にちょうどよい。

5版が発売されましたね。私は初めてこの著書に出会った時はそのセンスの良さに衝撃を覚えました。精神神経薬理学において間違いなく本書は最高峰であると思う。個人的には精神科を生業としている職業の方は全員が読むべき一冊と考える。同業種で読んでいないスタッフとは話がしたくないと思う。

高価!何を言っているか分からない!
しかし、避けてはだめだ。DSM‐Ⅴ。ICD-11。そのちょっとした理解が必要なのである。

通勤中の一冊にどうぞ

現在、精神分析を臨床上あまり使われていない事実はある。特にジャック・ラカンは哲学者と言いわれることも多いがそれは違う。

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